以下の内容は2007年1月23日付けの琉球新報夕刊の「うちなー健康歳時記」に掲載された内容です。
「てんかん」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?得たいの知れないなにか恐ろしいもの?治らない精神病? WHOが定めた「てんかん」の定義では、「てんかん」とは①大脳の神経細胞の過剰発射(異常な興奮・脳波上の発作発射)によって引き起こされる、②反復する発作(てんかん発作)を主症状とするもので、③いろいろな原因によって生じた慢性の脳の病気である、とあります。脳はいろいろな機能を持っていますので、興奮を起こした場所の症状がてんかん発作の症状になります。たとえば手足を司る神経が勝手に興奮した場合、手足の痙攣が起こります。
脳細胞の勝手な興奮はどうやって証明するのでしょう?それが脳波検査になります。心電図のように、頭に電極を置いて脳から発生する微弱な電流を記録する検査です。では、脳波検査で異常が認められた場合、すぐてんかんと診断されるのでしょうか?答えはノーです。発作を目撃するか、あるいはその痕跡なり、起きた証拠を探さなければいけません。さらに発作を認めたからといって、すぐにてんかんと診断されるわけではありません。
てんかんの原因はなんでしょうか?定義上『いろいろな』とあります。「大きく分けて①脳に構造上の問題が証明される場合、②構造上の異常は証明できないけれどもかなり疑われる場合、③脳神経機能の異常によるもの3つがあります。」③は遺伝的あるいは体質的なものとこれまで言われてきたもので、近年脳神経の興奮を制御するイオンチャンネルの異常が証明されてきており、遺伝子も同定されてきています。
ではこのてんかん、いったい何人くらいの患者がいるのでしょうか?神経疾患の中で,てんかんは最も罹患率の高い疾患です。総人口の約1%といわれており、生涯1回でも発作を起こす可能性は約10%,2回以上経験する人は約4%とされます。従って学校だと1学年に100人いれば約1人てんかんの児童がいる計算になります。かなり多い数字と思いませんか。
てんかんも小児てんかん、大人のてんかんとあります。小児てんかんは種類も多く、診断によって治癒率が全く違います。しかし、小児には良性のものが多いので約7$301C8割がお薬で発作を抑制でき、内服を止めることもできるでしょう。しかし残り約2割は大人まで内服を継続するか、あるいは発作を止めることが難しいということになります。大人のてんかんの場合は小児と比べると治癒率が下がります。詳しい情報は主治医の先生に聞いてみてください。
てんかんは慢性の疾患です。信頼できる主治医と焦らずに付き合っていくことが治療の一番の秘訣だと思います。また、てんかんについて仲間で勉強したい、同じ患者同士支えあいたいと思う方、患者と親の会である『波の会』があります。詳しくは波の会沖縄支部事務局098-889-2092までお問い合わせください。